シルク下着は虫に食べられやすい?本来虫食いがないシルクが虫に食われる理由と対策
「タンスの中にしまっていた服が虫に食べられて穴が空いてしまった」という話を聞いたことはありませんか?
防虫剤のコマーシャルなんかでよく耳にすると思いますが、シルクも虫に食べられるのかしら?と思われる方もいらっしゃると思います。
では、実際はどうなのかこれからお話していきたいと思います。
元来シルクのマユを食べる虫はいない
シルクは蚕(かいこ)のマユから生産されるのは皆さんご存知ですよね。
蚕の幼虫が成虫に変わるときにマユを作ってその中でサナギになります。
サナギは成虫になるまでろくに動けないので、とても無防備です。
そのときに周りを囲っているマユが虫などの外敵に食べられてしまえば成虫になることが出来ません。
元来マユを好んで餌にする虫はいないので、マユが食べられることがないのです。
ですのでシルクは虫に食べられない繊維と言えます。
シルクが精錬されるとなおさら虫に食われない
マユが虫の餌になっていないことはおわかりいただけたと思いますが、条件次第ではシルク繊維製品では必ずしも虫に食われないとは言えません。
蚕から生糸(正絹)にする際に精錬という、繭糸(けんし:マユの糸)の表面についているセリシンという硬いタンパク質を落とす作業があります。
正絹であればこのセリシンをきれいに取り除きます。
さらに、不純物が取り除かれるので糸自体がとても清潔です。
虫はシルクそのものを食べるのではなく不純物や汚れを餌にするので、元々虫に食べられないマユから更に不純物を取り除いた正絹の製品は虫に食べられることはありません。
きちんと精錬された正絹は防虫剤がいらない
このことからきちんと精錬されたシルク製品には防虫剤がいらないことになります。
変に防虫剤を使うことでシルクにニオイがついたり悪影響が出る場合もあるので、ちゃんとした正絹の製品の場合はあえて防虫剤を使う必要はありません。
現に当店のシルクは全て5Aランク以上のシルク生糸を使っていますので、虫が入らないようにしている以外は特別な防虫対策はしておりませんし、虫に食われたこともありません。
当店ではシルク製品をビニール袋での個別包装をしておりませんが、それでも全く虫食いはありません。
シルクでも不純物や汚れがあると虫食いが起こりうる
きちんと精錬をしているシルクは虫に食われることはありませんが、絹紡糸や紬糸の場合は同じシルクといえど虫食いは起こり得ます。
絹紡糸や紬糸は本来正絹として扱えない2級品シルクを細かく刻んで再利用したものがほとんどです。
2級品はキビソ・ビスなどのマユの副産物や、サナギが一緒に入り込んだりしているものもあり、正絹に比べ不純物や汚れが入っている場合が多いです。
加えて安いシルクは精錬をきちんとしていないものも多く、変な匂いがしたり黒い異物が入っていたりします。
正絹でも中途半端にセリシンが残っているものにも注意。
精錬不足により不純物が残っている可能性が高いです。
これらの不純物や汚れが虫を誘いそして餌となり、不純物が入っていない部分まで一緒に食べてしまうのです。
また洗濯しない場合も同じように皮脂などの汚れを餌にするので虫食いが発生します。
シルクではなくウールやカシミヤとブレンドされたシルクは虫食いの注意が必要
防虫剤のコマーシャルでおなじみの衣類の虫食いで一番多い素材は、ウールやカシミヤなどの動物の毛で作られた衣類です。
イガなどの蛾、カツオブシムシなどの甲虫が、ウールやカシミヤに卵を産んでその幼虫が衣類を餌にしてしまうのが虫食いの主な原因です。
シルクも動物性天然繊維なので虫食いがあると言われがちですが、正絹の場合、悪条件が重ならない限り虫は食いません。
ただし、シルクとウールがブレンドされた衣類も、ウールに虫が寄ってきてシルクも一緒に食べてしまうこともあります。
同じようにウールの製品とシルクの製品を一緒に保管していると、ウールに寄ってきたシルクが食べられてしまうことも十分起こり得ます。
シルクを虫に食べられないようにするには
俗に高級シルクと呼ばれるきちんと精錬加工された正絹であれば、汚れてさえいなければ虫に食われることはありません。
虫に食われない予防策は虫を誘引する要素を取り除くことにあります。
- きちんと精錬して不純物を落とした正絹のシルク製品を買う。
- 使用したり汚したりしたら、きちんと洗濯をする。
- ウール・カシミヤ製品や絹紡糸や紬糸などの安いシルク製品と一緒に保管しない。
- 防虫剤は極力使わない。適度なローテーションで製品を使用し、収納しっぱなしにしないなら防虫剤は不要。
- 保管場所は衣装ケースやタンスなどで特に気を使わなくて良い。ただし虫が侵入しにくいようきちんと閉める。
まとめ
いかがでしたか?きちんと精錬された正絹のシルク製品を選び、手入れをし、虫を誘引するものを避け、普通に収納すれば防虫剤もいりません。
余計なお金と心配は御無用です。
先程も少しお話ししましたが、当店の商品は全て5Aランクのきちんと精錬されたシルクばかり使用していますので、きちんと収納する以外は特別な防虫対策はしておりません。
防虫剤などを使用して、逆にシルク製品にニオイや変な化学反応が起こることを避けたいので、防虫剤も一切しておりません。
シルク本来の防虫性を活かし、本物のシルクを皆様に安心して着用いただけるよう心がけております。
よろしければ、当店の虫が食わないシルク下着を是非ご覧になってください。
長文をお読みくださりありがとうございました。
シルクチュール 店長 山本 寛