シルク下着に使われる糸(絹紡糸編)
シルクの糸は大まかに3種類に分類されます。
今回はその中の絹紡糸(ケンボウシ)についてご説明いたします。
シルクの糸その② 絹紡糸とは
シルク下着に使われる糸で一番良く見かけるのががこの絹紡糸です。
実際、日本で販売されているシルク下着の大部分はこの絹紡糸を使った生地で作られています。
絹紡糸もシルク糸である事には違いありませんが、では何が生糸と違うのでしょうか?
フィラメント(長い繊維)でなく短繊維である
絹紡糸はフィラメントを人工的に短くカットしたもの(短繊維という)を混ぜ合わせ、それを均(なら)したものを棒状にし そこから撚りをかけて糸にしたものです。これを紡績糸といいます。
前回お話した生糸はマユから取り出した1~1.5kmの長い一本の糸フィラメントを数本撚り合わせたものです。
なぜフィラメントで使えるシルクをわざわざカットするのか?と言いますと 主たる理由は選別に漏れた2級品のマユや生糸の副産物を再利用するためです。
生糸を作る前、まずマユを選別する作業があります。マユに穴が空いていたり、変な汚れが付いていたり、フィラメントに太い/細いのムラがあったりとこのような選別ではじかれたマユを使い良いところだけカットして再利用しているわけです。
光沢がない、糸を細くできない、適度なハリがない
絹紡糸が生糸と決定的に違うところ、それは光沢のなさです。短繊維ですのでいくらきれいに均しても糸の表面は生糸に比べて毛羽立ちます。そのためシルクの最大の特徴の光沢がなくなります。
また 絹紡糸は繊維長が短いので糸の強度が弱く、どうしても一定の太さ以上にし撚りをかけないと糸として使えません。そのため生地が薄くならずどうしてもボテッとしてしまいます。
またフィラメントをカットしている為 糸自体にハリがなく、クタ~っとした風合いになり、空気含有率も増え 生糸よりも暖かく感じてしまいます。
不純物が入りやすい
絹紡糸には生糸を作る時に出る副産物「キビソ」や「ビス」を使う事が多いです。「キビソ」はマユの一番外側、「ビス」はマユの内側の糸のことです。
これらを利用した場合 時折汚れのような黒いカスのような不純物が入ってしまいます。これは精錬(シルクをきれいにする工程)しても取りきれず糸に残ってしまうケースがあります。
「シルクは自然のものなのでどうしても汚れは入りますよ」と説明している通販がありましたが 当店で使ってる5Aランク生糸にはそのような汚れは一切入ってません。
きれいな色が付けられない
短繊維ではフィラメント特有のプリズム効果がなく、不純物が残っているようであれば当然きれいな色はでません。きれいなカットわたを使っているものはまだマシですがそれでも生糸の発色性にはかないません。
絹紡糸のメリットは?
原材料が選別から漏れたマユや副産物なので 生糸に比べて値段は格段に安いです。生糸の半分もしくはそれ以下の値段で生産できます。
また糸にする前の原料(わた)から染めることができるのでメランジカラー(霜降り色)の糸をつくることができます。ちなみに生糸では霜降り染めはできません。
異素材とブレンドして混紡できます。例えばシルク/ウール や シルク/コットンなどの糸が作れます。
絹紡糸のまとめ
絹紡糸とは
- 使われるマユは2級品。良いところだけを人工的にカットした短繊維
- 美しい光沢がない
- 糸が細くできないので薄くてきれいな生地ができない
- 短繊維のためハリがない
- 不純物が入りやすい
- きれいな色が染められない
- 価格が安い
- 霜降りカラーが出せる
- 異素材とミックスできる
生糸と比べると価格はメリットがありますが シルクとしてはどうしても見劣りしてしまいます。
アドバイスとして絹紡糸使用のシルク下着を選ぶ時のポイントは糸の太さに着目すればよいと思います。
240番手(数字が大きいほど糸が細い)以上を使っているのならそれなりの品質はあると思います。不純物が少なく、わたの太い細いが少なく、カットされた繊維長も長いでしょう。
番手の記載が無かったり、それより太い糸の絹紡糸は注意したほうが良いです。特に思い切り安い価格であれば要注意です。ひどいものは精錬不足や不純物の混入で何とも言えない変なニオイがします。絹紡糸でも良いものはニオイなんてしません。
次回は 紬糸についてお話したいと思います。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。
当店でも1アイテムだけ このブログトップ画像のシルクコットン深ばきショーツに絹紡糸を使っています。比較的良質のシルクわたと高級コットンとブレンドしているので色もまずまずきれいです。値段も5Aシルクフィラメントよりもお安くなっています。もちろん変なニオイはいたしません!