シルク下着に使われる糸(生糸編)
この記事は2022年2月18日に追記及び一部編集を行いました。
最近 シルク【絹】が広く一般の方でも認知されるようになってきました。
ちょっと前までは「シルクは高級品」というイメージでした。
「冷えとり」や下着・化粧品関係でも「お肌に良い」ということで一気にメジャーになった感じがします。
メジャーになったおかげで ネットでもいろんなシルク下着が出てきて値段も高いのから安いのまでたくさんあり、どれを見ても「高級」や「お肌へのやさしさ」は当然のごとく書かれています。
ネット通販では一回買ってみないと素材感も質感もわからないのが現状です。
当店のお客様でも他のネット通販で買った下着が「すぐダメになった」とか「ペラペラだった」とか「洗ったら縮んだ」と言われる方が大勢いらっしゃいます。
私はシルク下着を売る側として、こんな素晴らしい繊維はもっと多くの人に知られるべきだと思っています。
だけど シルクの説明が足りなかったり、適当だったり、ひどい時は根拠のない事をあたかも効果・効能のように表現しているものもあります。
「シルクとは一体何ぞや?」ということを 小難しいことはできるだけ省いてわかりやすく、正直に説明して行こうと思います。
それではまずシルク下着を知る上での基本になる「糸」についてお話していきましょう。
シルクの糸は大まかに3種類に分かれる
シルクはカイコが作るマユから取った細い糸からできる天然繊維です。
カイコは元来自然にいるものですが 市場に出回っているシルクは人間の手で育てられているカイコのものがほとんどです。
専門的になりますが 人工飼育されているカイコから採れるものは家蚕糸(カサンシ)、野生で採れるものは野蚕糸(ヤサンシ)と呼ばれます。
家蚕糸は野菜のハウス栽培の様に一定の環境下でカイコが飼育されるので品質にバラつきが少なく 自然で育った野蚕糸より品質が高いため 衣料品では圧倒的に家蚕糸が使われることが多いです。
ですが、家蚕糸であってもやっぱり生き物が生み出す繊維なので採れる産地、食べる餌や育てられた環境の差で採れるマユの品質のバラツキが出てきます。
ですので採れたマユはまず最初に選別をします。
汚れたものや穴の空いたもの色が変わってるものを取り除き きれいなマユだけを使い生糸にしていきます。
それ以外のマユは絹紡糸や紬糸として再利用されます。
シルクの糸は大きくこの ①生糸、②絹紡糸、③紬糸 の3つに分類されます。
シルク糸その① 生糸とは
選別されて最後に生き残った優秀なマユから長い糸を取り出します。この長い糸はシルクフィラメントと言います。
ちなみにこのフィラメント一本どのくらいの長さがあるのかというとなんと、1000~1500mもあります。
糸の細さは髪の毛の1/20ほどの細さです。なのに切れずにこんなに長い状態が保てるなんてすごいでしょう。
このフィラメントを撚り合わせた後、表面の硬い物質セリシンを精錬して取り除き 柔らかくしたものが生糸と呼ばれるものです。
生糸で作られた代表的なものは西陣織などで有名な着物です。つまり生糸は最も高級なシルク糸として位置づけられます。
素晴らしい光沢、きれいな発色性、適度なハリとしなやかさ
生糸の特徴はなんと言っても素晴らしい光沢ときれいな色!これらは絹紡糸や紬糸にはありません。
フィラメント特有の形状が光を反射してプリズム効果を生み出し、きれいな光沢となります。
また、選別された不純物の無い糸なので染める時に染料の吸着を邪魔するものがなく、最高にきれいな色付けをすることができます。
着物を着た方なら分かると思いますが ダレダレでもなく、バリバリでもなく 生糸には適度なハリがあることがわかります。
このハリは糸の強度によるもので衣類の形状を保つ効果があります。生糸は強く、引っ張ったぐらいじゃ簡単には切れません。
ハリがあるにもかかわらずお肌に当たる風合いはツルッとしてなめらか。お肌への抵抗を殆ど感じないスベスベの感触です。
これはシルクフィラメントにほとんど毛羽がないためです。お肌に摩擦抵抗がなく優しい肌触りです。
「ツルッとしてるなら冷たい感じがするのでは?」と言うとそうではありません。
シルクは保湿、吸湿、吸水効果があり空気を含みやすい形状なので 冬は暖かく、夏はサラッとするオールシーズン対応の繊維です。
雪山登山愛好家の方の間ではインナーウェアはシルクがNo.1と評判です。
着込んで汗をかいても水分を外に出してくれるので冷えないし適度に空気を含むので温かいという理由からだそうです。
シルクは自然が生み出した魔法のような繊維といえます。
生糸には格付(ランク)がある
フィラメントでできた生糸はシルクの中で最も高級なものですが その生糸には更に格付(ランク)があります。
生糸の生産国の国家機関で厳密にチェックされ 品質の低いものから1A、2Aとランク付けされ、最高級は6Aと格付けされます。
チェック項目は 糸の太さのバラつき、フシ(結び)の多さ、糸の強さ・伸びなど色々検査項目があります。
全世界で毎年採れる生糸の中で5A及び6Aのものはわずか10%しかありません。
高級品と呼ばれる5A以上は選びぬかれたシルクと言っても過言ではなく、希少価値の高い糸です。
ちなみに絹紡糸や紬糸は生糸でないのでランク付けは存在しません。
つまりランク外の糸ということです。
生糸のまとめ
今回はシルク糸の中の生糸についてお話しましたが 生糸は
- たくさんのマユから選別され選ばれたシルクであること
- シルク本来の姿であるフィラメントでできている事
- 格付(ランク)があること
が大きなポイントです。
素材でシルクを選ぶなら 5Aランク以上の生糸のものを選べばハズレはないでしょう。
注意点は生糸を使っていてもあまり薄っぺらい生地のものは選ばないということです。
いくら格付けの高い生糸を使っていてもペラペラだとスケスケですし、生地の強度も弱くなります。
ちょっと専門的になりますが 生地の重さが1平米あたり130g以上あればペラペラすぎず大丈夫だと思います。
しかし平米あたりの重さまで表記しているところは中々ありません。
その場合ショップにメールで「この商品に使われている生地は平米あたり何グラムですか?」と聞いてみましょう!
ちゃんとしたショップならきちんと返信してくれるはずですよ!
【聞くときの注意事項】
生地の重さは生糸で出来たもの同士を比較してください。絹紡糸・紬糸で出来た生地はただ重いだけで糸が良くない場合があります。
絹紡糸・紬糸の事は またの機会にお話します。
ちなみにシルクチュールのシルクは生糸の格付け5Aランク、重さは大体平米あたり135g~150gのものを使っています。
私(店長)はこの繊維業界に30年在籍していますし、シルクの本場中国にも4年間駐在して糸の仕事をしていた経験があります。
シルクに限らず糸についての知識にはそれなりに自信があります。
当店のシルクは毎回中国から仕入れる前に私自ら品質をチェックして良いものだけを買付しています。
なので 品質に関しましてはどうぞご安心ください。
次回は 絹紡糸 についてお話したいと思います。
最後までお読みくださいましてありがとうござました。
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